80点/100点満点
渋谷で人々の身体が消失して霊魂だけになり、ついでに化け物が徘徊するようになってしまった。化け物を成敗しつつ人々の霊魂を集めて救済せよ。ざっくり言えばそういう感じの、渋谷を主な舞台にしたちょっと和風オカルトチックなFPS。ただあまりホラーっぽくはない。
パブリッシャーはベセスダだが、実際の開発はバイオハザードの初期の作者である三上真司氏が作ったTango Gameworks(代表作はサイコブレイクシリーズ)で、当時はベセスダ傘下でありつつも日本のスタジオ。ただし、本作では三上氏はエグゼクティブプロデューサーということで、本作の作者はディレクターとシナリオライターの木村憲司氏というべきかと思われる。
概して、本作を構成する個々の要素には元ネタを想像できるものが多いが、その分オープンワールドのゲームとしては手堅く作ってあるという印象。ベセスダのノウハウも活かされたのかも知れない。特に、最大のウリとなる渋谷周辺のレベルデザインはなかなかよくできている。ただし、必ずしも現実の渋谷とまったく同じというわけではなくアレンジしてあって、その意味で龍が如くの神室町のような感じ。また中盤以降はどう見ても渋谷区ではなさそうな場所が多くなってくる。まあGhostwire: TokyoであってGhostwire: Shibuyaではないので、渋谷以外の街も入っているということなのかも知れない。最終盤には東京タワー(港区)も登場する。
オープンワールドゲームとしては、拠点となっている神社にいる敵を一掃すると霧が晴れてマップの行動範囲が広がる、メイン/サブミッションが各所に設定されている、各種アイテムや霊魂を集めて回るなど、オープンワールドのいつもの通りの流れで進めることになる。ただ本作でやや特徴的なのがパルクール要素で、本作は超常能力アリの世界なので、主人公が制限付きながらフワフワと飛び回ることができ、従来のパルクール重視型ゲームよりも高い場所の移動がやりやすい。従来のゲームのパルクールは、どうしても爽快感より、まとわりつく重力を感じてしまう傾向があったが、本作では渋谷のビルの間を楽しく飛び回れる。ヘリコプターなどに乗れるオープンワールドゲームも多いが、それだと高く飛びすぎでバルクールとは別物になってしまう。本作のパルクールはバランスがいい印象。また本作で屋上に登れるビルの数は相当に多い。
戦闘は超常的なものを含め飛び道具を使ったものが中心。パッドでプレイする場合のエイムは、エイムのモードに入ったときにオートエイムが効くという方式で、敵が動いていくにしたがってオートエイムをやり直す必要があるので少し面倒。ただ評者は今回主にマウスでプレイしたのだが、この場合エイムの補助はまったく効かない。このためどうしても外した分弾が無駄になるのだが、序盤から中盤にかけて弾数の上限がきつすぎて弾が足りなくなることが多かった。弾数上限はマップに配置された地蔵を見つけることで増やせるのだが、これを探すのがあまり簡単でなく、結局弾が不足気味のまま戦わなければならない期間が長かった。このため弾の補給にあたる結晶体をいちいち意識的に集めて回らなければならなかった。ステルス的にバックスタブやデスフロムアバブもできるが常に可能なわけではなくやはり足りない。結論として、本ゲームは少なくともマウスでプレイする場合やや戦闘のバランスが崩れている。この傾向は、アップデート後に追加された強力な敵と戦うとき、特に顕著に見られた。アップデートの追加要素でバランスが崩れるというのは本作に限らずよく見られる現象だが、一部のイキがったプレイヤーの簡単すぎるという声にゲームデザイナーがムキになってしまうのか、はたまた既存プレイヤーばかり見て新しいプレイヤーの存在を忘れるのか……どういうわけだろうか。まあいずれにせよ、弾数上限の初期値はもっと多くしたほうがよかったし、レベルアップだけで弾数上限が増えるようにすべきだった。基本的に、オープンワールドの宝探し要素というのは、配置するのは簡単でも探すのは想像以上に大変なもので、見つけられないとバランスが崩れるような要素を宝探しの対象にすべきではない。
またこのゲームのメニュー画面は、メインの項目の下にサブメニューがあるというのがわかりにくいため、SKILLにPLAYER ACTIONだけでなくHAND ACTIONとEQUIPMENTがあることに中盤まで気づかなかった。EQUIPMENTの強化ができないと、矢の所持数上限も増やせず、戦闘がさらにきつくなる。
敵の方は割と近接攻撃中心で、敵の飛び道具は弾速が遅いものが多い。PC側は防御と回避ができるようになっておりジャスト防御もあるが、評者のプレイでは防御はほぼ使わなかった。本ゲームに限らず、防御というのは、ゲームデザイナー側が防御ができない攻撃という"ズル"をすることが多く、覚えてもあまり意味がないことが多いので、評者の最近のプレイでは使うとしても回避が中心となりがちである。
このゲームの戦闘時のビジュアルはキラキラピカピカした感じで、どちらかというとSF風。こういうタイプの表現は、あまりリアリティはないのとそれ自体によって視界が遮られる側面もあり好みが分かれるところかも知れない。ただとにかく派手めである種の爽快感はある。
ストーリーについては、やや消化不良。ここからはネタバレ。
まず世界設定の面から云うと、なぜ霊魂を集めて回らないといけないのか、なぜマレビトたちは襲ってくるのかといった基本事項からして、どうもあまりピンと来なかった。最初にある程度KKが簡単に説明はしていたわけだが…それだけだと足りていないように思う。一応の評者の理解だと、般若が最後の儀式を行うために霊魂を集めなければならないという事情があって、その手先としてマレビトたちにカゴメカゴメでもって霊魂を集めて回らせていたということのようだが、実際のところ、大抵の時間はマレビトたちは道でブラブラしているだけで、カゴメカゴメはたまにしかしていないではないか? そもそも最初に人体一挙消失という大技を披露しておきながらその後に残った霊魂だけはチマチマ集めて回らないといけないというのもなんだか不自然ではないか。また、霊魂が元の人体があったのと離れた位置にまとまって存在しているのはどういうわけなのか? それに、般若とその家族が一味になっているのはまあいいとして、その他のマレビトとの関係はどうなっているのかよくわからない。なぜ高校生や傘を持ったスーツ男を操っているのか? また、KKは般若のところに送られた霊魂は救われないと説明していたように思うが、その証拠を何も示しておらず、むしろ般若側としては自身が霊魂を救済していると主張していたようであり、ストーリーが終わってもその論点についての結論は出ていなかったように思う。この辺りが曖昧だと、そもそも主人公がやってることが正しかったのかというところまで曖昧になってしまう。
それとやや細かい話なのだが、主人公の交通事故のファーストシーンから始まるが(ただしこれはアップデートで追加されたシーンらしく、発売当初版にはなかったようだ)、少しストーリーというものに慣れている人間だと、これは夢オチを疑わざるを得ない構成である。つまり渋谷の人体消失事件以降の出来事は、事故に遭って昏睡状態に陥った主人公が見た夢であるという解釈が成り立つ。結末に病院で主人公が夢から覚めるシーンがなかったので逆に驚いたが、いずれにせよプレイ中にはその解釈を捨てるだけの材料がないため、ストーリー中の出来事がある面で非常に軽いものになってしまう。どうせおそらく夢なのだから。一方で、このような立場では、夢の中で起こる奇妙な出来事は主人公の心理的トラウマの反映との解釈が可能になる。実際そういうシーンもいくつかあったわけだが、ただこの解釈を徹底するには、どうしてマレビト男の多くが黒服に傘なのかといった掘り下げ不足の点も多い。
以上、種々問題はないこともないものの、全体として見れば割と楽しめたゲームと思う。最近割と思うのが、それなりに楽しさがあってもゲームデザイナーの性格の悪さみたいなものが垣間見えるゲームでは勧める気が失せる。このゲームの場合はそういう難点は少なかったかと思う。
続編があったらやってみたいと思うが、マイクロソフトのゲーム事業縮小とかいろいろあってTango Gameworksというスタジオも大分変わっているようであり(三上氏はもういない)、実際、続編プロジェクトは以前存在していたらしいがその後音沙汰がないようで残念である。